みちびき その1 ~パソコン通信のRT~
ふと顔をあげると、TVの画面には「パソコン通信のRT」が映っていました。
つけっぱしのTVは、深夜のドラマを流していたのです。
画面には、RT(今で言うチャット)の上から下へ流れる言葉。
HN(ハンドネーム)で交わされる会話。
パソ通はまだ「はしり」だったので、初めて見るものでした。
その当時は、会社の寮にいました。
部屋で本を読んでいたのです。
ドラマなんてあまり見る方ではなかったのですが、なんとなく気になって顔をあげました。
ドラマは、パソコン通信で知り合った二人の話・・・のようです。
そのRTの画面を見た時、
<私はここに行かなければならない。行って会わなければならない人がいる>
と強烈に思いました。
次の日には電気屋さんに行ってました。
当時のパソコンはまだまだ高く、自分に扱えると思えなかったので、
モデムを取り付けると通信ができるワープロを購入しました。
専用のモデムは取り寄せで一ヶ月かかると言われたので、
その週の内に、友達と18切符で夜行に乗って東京へ。
秋葉原でモデムを買いました。
取り付けて初めて、この寮の建物ではパソ通ができないと分かりました。
次の日から、アパート探し。
ほどなく見つかり、その月の内に引越しました。
なぜ、こんなに急いでいるんだろう?
自分に何度も問いかけました。
「早く、早く」
焦る気持ち。
抗えない衝動。
この感覚は、身に覚えがありました。
*
こういう時、私には自分に確認する呪文のような言葉があります。
<<選択権は私にある。決めるのは私>>
だと。
後になって、自分以外の誰かのせいにしない為に。
あくまでも、決めたのはその時の私だと。
*
引越しが終わって、次の日に会社に行きました。
その日。
「寮にいる大半の人は、同じ系列の別の会社に出向するように」
とのお達し。
その会社の寮は、マンションのような建物がいくつもあったので、
対象者はかなりの人数になりました。
その説明会に行かなかった私に、会社の人が聞きにきました。
「昨日、アパートに引越したのです」
なんというタイミング。
もしもこの日、まだ引っ越していなければ出向になり、
1年以上ホテル暮らしになった為、パソ通など出来なかったのです。
あのRTの画面を見た瞬間に、感じてはいました。
「これは<みちびき>だ」
(続く)
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